B Trumpet V,Bach “197 New York 7”Limited Edition 続編

B♭Trumpet
ブランド名:V.Bach (=Conn-Selmer,Inc)
型式・仕様:Bach 197 New York 7 Limited Edition 2003・#7Bell French Beat #7Lead Pipe
バックの中にあって、最も一般的なのは#37ベル/#25リードパイプのMLボア。プロ、アマを問わず、使用されており、よく知られたスタンダードモデルで、トランペットプレーヤーの方なら良くご存知のはず。今回は限定モデルであるBach 197 New York 7 を取り上げてみました。

***では、簡単に仕様の説明をお願いします。
スタンダードモデルに装着されている#25リードパイプを使うよりトーンが暗くなる(と言われる)#7パイプが装着されています。レシーバーの長さも違いますね。ベルは#7、198Vintage(=以下198)の♯6ベルがスタンダード(#37)ベルのベースになったものらしいのですが、こっちの方が似てますよね、でも、具体的に何がどのように違うのかはわかりません。材質はイエローブラスらしく、バックでは近年のモデルで使っていない断面が半円状のフレンチビート。3rdストッパーがリバースでリードパイプ側に支柱がない一本タイプです。2003年から発売され、2005本限定生産モデルらしいです。

***198とは違う方向での、インパクトのあるルックスですが。
チューニングスライド等はゴールドで本体がシルバーのツートーン、ゴールドプレートトリムキットも装着されていますが、198にあった化粧石のフィンガーボタンやベルインナーGP、特別彫刻は無くなりました。チューニングスライドの間隔が狭いナロータイプ、リバース仕様のような一本支柱なっています。他にはゴツいジョイントリングやサムフックがリングになるなど、これはこれでやっぱり目立ちますよね。
“New York”って言うなら、1番管のリング型指掛けが無くして(ツートーンをさておき、全体的な形で)言うと、こっちの方が似てると思うなあ・・・それでいうと198の方は、バックの工場が同じNew York(#1)でもMt Vernonにあった頃に生産されていたものをベースとした復刻版っていうような感じでいうと納まりますかね。

***外観上とか構造的特徴は?
改めてベルとマウスパイプが”197″用に限定復刻。延べ座(マウスパイプとベルをつないでいるリンケージ)が大きくて長めになっています。それから3番管のストッパー現行品の逆、リバースになっている、あとメインチューニングスライドのスパンが狭く(ナロータイプと言われている)て、マウスピースレシーヴァーが長いが主なところです。シリアルナンバーも2000本程度らしいので4桁の通し番号で表示されていますね。それと外見上は分かりませんが、ライトウェイトボディ(#2)にスタンダードウェイト(#2)のベルと言うのは、リヴァース(LR180‥)モデルぐらいなので、この辺りの組み合わせもスタンダード・・・レギュラーモデルと違う特別仕様と言えるかもしれません。

***さて、「中身」の方はどうですか?
ライトウェイト(のボディ)なのにそんなに軽く感じませんねえ・・・まあ持っただけだと(ウェイト的には)よくわかりません。試奏の方は、低音域から高音域までスムーズにエアーが入り、レスポンスが大変良くてどの音も均等に鳴ります。
この辺りはライトウェイトボディだからという事もありますが、リードパイプをはじめラージボアなど構造面…作り方っていうのか、そういうところも影響していると思います。少し吹いた感じだと素直でエアーもよく入るしスタンダードと変わらないかな?って思いました。

音色は明るい・・?インパクトのある鳴り方かな?硬めでブライトに感じます・パワーをかけた時にスタンダードのバックのエレガントな部分が、逆に硬質となってちょっと刺激的、その辺が個性的なサウンドと言えるものかもしれません。ちょっと表現が難しいのですが…。

⇑なーんて、20年程度前には知り合いのプレーヤーとのやり取りでレポートを書いていた訳ですが、こう言う楽器にはまるで興味のない、それでいてバックが大好きなHさんと話をすることになって、新たな展開に発展してきた結果ー

***これって、どう思う?***
「どう思うって言われても、単純に派手な楽器だと思いますが・・・、あと目立つし・・・。バンドでそんなの出されたら、なんだそれ?って感じでそっちに目がいくと思いますが」
***やっぱり見た目かな?どこの(メーカー)?って気にならない?吹いてみたいとか、ねえ***
「そうですねえ・・・(僕は)興味ないけど、なんだ?あれ、っていう風にはなるとは思います。金銀のツートン、バックみたいに(3番に)ストッパーが付いてるけど逆だし、(一本支柱なんで更に)なんか雰囲気違うし・・・って。ところでなんなんですかそれ」
***ニューヨーク7の限定品***
「ああ、あれですよね、(中略:前述の楽器の仕様説明)限定品があったんですね」

ーと言うわけで、強引だが、話のテーブルに乗せることに成功
***で、どう?見た目以外のところで***
「どうって・・・持った感じで言うと・・・(持っただけだと)よくわかんないなあ・・・これってライトウェイトですよね?でも言うほど軽いって気はしませんけどね、(と言って各チューニング管を抜いてー)ライトウェイトですよねえ、ラージボア・・・だからって感じでもなさそうだな・・・ベルが違うのかな・・・☆が無いって言うのはそういうことですよね?限定品って違うんですか」
***限定品が違うっていうより、現行モデルが違うっていう方が正しいけどね、こっちの方が先に出て、そのあとでレギュラーモデルになったわけだから***
「まあ、その辺の話は、後回しにしましょう、♯7ベルですね、なんだろ?今の♯37?似てますよね、違うのかな。パイプも♯7、今は聞きませんがー、ちょっと前になんかありましたよね、なんでしたっけ?」
***C管かね?229-Bell/7R-Lead Pipeのこと?それでも相当前だったかな***
「そうです、あれってどうでしたっけ?」
***#7っていうのは確か♯43パイプみたいに抵抗があまり無いタイプだったと思うけど・・・。あとリバース、エアーはいっぱい入って自由度が高くなる半面、中途半端では不安定になりやすくそれが音に反映されやすい。でもあれは、C管だから長さも短いし、参考にならないんじゃないの、だから、ちょっと吹いてみてよ。(と、半ば強引に)***
(わかりました)と「へえー、なんか全然違いますね、鳴りムラがなく・・・どの音も同じように鳴る。エアの入り方も変わらないですね、普通っていうか当たり前がちょっとびっくりです。ライトウェイトって感覚がありますが、感覚だとL Boreの影響が小さくないんじゃないんですか」
***L Boreって、エアだけじゃなくて鳴り方にも特徴が出ると思うだけど、そんな感じはないよね?***
「そうですね、まとまりっていうより広がり感があるー(強奏すると)硬質な♯37ベルみたいな鳴り方していますね。(無限にエアが入っていくような)抵抗が無いこともない。試奏室なんで細かいところまでは言い切れませんが、モニター性ですかね?」
***バックの音はするけど、どこか違うような気がするんだけどね・・・***
「まあそうですね、バックだけど・・ストラドのサウンドとは違うっていうのかな・・・。でもそうなりますよね、L Bore自体があまり一般的でないし、『ライトウェイト』っていうのにそれっぽくない。リバースでもないうえに支柱も一本でナロータイプチューニングスライド、得体のしれない♯7 Bell仕様で『ブロンクス(#1)』の復刻って言われますが・・・サウンド的にはどこを狙ってんでしょうか?」
***そういえば”198 Vintage”の生産が終わった頃の2003年から発売したんだよね、なんかのメモリアルでもないのに、今思うと何のタイミングだ?って考えてしまうなあ。***
「そうなんですね、でもその頃って、何かありませんでしたっけ?」
***それってストライキをしていた頃のことでしょ?合併するの、しないのって・・・。かなりの騒ぎになった頃らしく、レギュラーモデルでさえ品薄になって全然無くなった時期だね。モデル182MLっていうのが代わりに出てきて、(たぶん)大混乱。だからこれもほんとに2000本も作ったのか?って、ちょっと怪しいんだよなあ***
「あ、なんかそんなのありましたね、なんでしたっけ・・・、BachじゃなくてConnが代わりに作ったとか何とか」
***そう、それ(Model 182)。そのあとみんな(メーカが)一緒になっちゃてね、作る楽器もブランド毎に絞られて専門性が強くなった。その代わりに、バリエーションが増えてきて、中には『どこの楽器だ?』というのもあって困っちゃった。
「これもそんな感じですか?」
***いやー、当時のバックの方向性まではわからないけど、多分違うと思うけどなあ。***
「じゃあ、方向性は置いといて、どう思ってるんですか?」
***試奏して思うに・・・。サウンドの方向性、エアの入り方、ガーンって鳴らした時の「音の荒れ方」とかは、ジャズな好みの気がする。ビックバンドでのリード向きじゃないけど、コンボなどソロ的にはかなり良さそう。アグレッシブプレイで、シンプルにRee Morganとか、・・・なんて思ってる***
「ピンポイントですね、クラシカルの方向には向きませんか、まあこれが向かなくても、他にいっぱいそれ向きなのが、ありますもんねバック。でもそうなるとそれ用に作ったてことですかね?
***LT(ライトウェイトモデル)って元はそういう方向で作ったらしいんだけど、使う側は「それなら・・・」ってことにはならないからね。N響のSさんみたいな人もいるけど、根本的なところでは、クラシカルな方向だとやっぱりスタンダードってことにならない?これなんかどうなんだろうねえ。***
「結局、好みになってしまいますから、そっちの方向でいいんじゃないですかねえ。二人して『これ!』って言っても誰も信じてないかもしれませんし・・・」
***だれも信じてくれないの?そりゃー残念だな、折角時間かけてリポートしてるのに***
「大丈夫です、『ほー』って思う人もいますから」
***ところで、ベルがフレンチビートになっているけどどうかな?さっき得体のしれないって話になったけど、サウンド面だけでなく、モニター性に違いからってことはない?***
「ヤマハさんが言われてますよね、フレンチピートってフィードバックがどうだとか・・要するに返ってくる音がよく聞こえてくるからコントロールしやすくなる、でもバックは、そんなに(モニター性)悪い楽器でもないし、その辺と遠鳴りがうまくバランスしている楽器でしょう?これ(フレンチビート)だから普通より、近く(より良く)に聞こえるっていう感じはないんですけどねえ・・・普通に跳ね返って聞こえてくるし・・・試奏室だからですか?」
***そういうことになるけど、やっぱりスタンダードと変わらないよね?じゃあ、バック(この楽器)の方は、オールドをリバイバルしたか、全く別な意図で作ったってことかね***
「どっちですかね?どっちでもなかったりして」
***なんだそれ、気分とか・・・?大喜利みたいな話になるとまとまる余地がないな***
「ではちょっとまじめな話をすると、さっきようなのプレーヤーが出るっていうことは、ジャジィな用途がおススメってことですよね、ジャズは詳しくないんですけど、音楽における求められる特徴や機能、場所を限定するなら僕もそこだと思いますけどね。吹奏楽やオーケストラでは(多分積極的には)使わないと思いますよ、これ以外にバック(のモデル)はいっぱいあるし、ヤマハを使っている人もいっぱいいる。その中でこれを使うっていうのは・・・『使えなくはない』ってことで使うプレーヤーはいないと思いますが」
***まあね。限定はしないけど、楽器の様々なメリットを考えるとそっちの方が『推し』かな。(若い時の)Roy Hargroveみたいにアクティブっていうかハードドライブに走りたいってプレーヤー向き***
「へえーそうなんですか、そのRoyさんのことは知りませんが、楽しそうですね。」
***そう楽しいんだが、中々ハマる人がいなくてチコッと難航中。でも多すぎても代りがないのでもっと困る***
「ラスト一本って事ですね」
***そう。と言うわけで税込販売価格が¥396,000、購買希望者を募集しています***

Note:
#1:創業はNew York。その後同じNew York のMt Vernonに工場を移転。現在はエルクハートにて生産。(⇒トランペットマウスピース:バックスタンダードの項)
#2:現行ニューヨーク7はライトウェイトモデル仕様ですが、2003年当時は”Model 197 New York 7″の限定品でライトウェイト仕様の紹介はありません、ベルに☆がないので。