楽器屋さんの修理のお話 全般

1:修理と調整 木管編です。
細かく言うと「修理」と「調整」は異なります。例えば、木管楽器で言うとキイの動作不良(動かない、動いてもそこで止まる等)、木割れ(クラリネット、オーボエ等のひび割れ)フルート、サックスにおける凹みによるメカニカル部分損傷(先ほどのキイがスムーズに動かない、トーンホールや管自体の潰れ、凹み、変形)など音が出にくくなる、もしくは出ない、など「そのまま演奏するには無理がある!」が修理、対する調整はエアー通りをよりスムーズにとか音程やアクションを改善してほしいとかの「演奏するには支障はないが…」などリクエスト的な意味合いになります。ですが、それらの要望も作業という点での区別はありませんので、どちらででも結構です、お気軽にお越しください。

2:スワブが取れなくなりました!Clarinet, Saxophone, etc
スワブを使うとき、十分に広げず、また紐を早く引っ張ると「カタマリ」の状態で入り込み、取れなくなるようです(比較的多いのはサックスのネック、あと意外と多いのがソプラノサックス)こんなときは、無理やり引き抜こうとしたり、掃除棒とかスネアのバチなどで押し出そうとしていなければ割り合い簡単に取れます。
ちょっとした事で取れる場合もありますが、慣れない(=慣れるのもどうかと・・・)と中を傷つけたり、別のトラブル(ほとんど場合悪化します)を招いたりする事もありますから、何もしないのが一番。よほどのことがない場合、持ち込めばサービスの範囲です。(せっかちにしないでね)

3:グラグラと…Clarinet , Oboe , Fagotto , Saxophone
クラリネットやオーボエのジョイントコルクは、ある程度使用すれば、収縮性がなくなり、ゆるくなってきます。
組み立て時にあまりにもストンと入り過ぎるものやチューニングのため、抜いた時など大きくグラつくものは、見てもらってください。またサックスのネックコルクも同様ですが、マウスピースを替えた時には、サイズが合わないことがありますから、古くなくても調整(巻き替え)は、必要となります。
バスクラリネットのジョイントコルクはB♭クラと比べ楽器が大きい分「きつめ」になります。だからといって無理をするとキイを曲げたり傷めたりするので、必要ならばやわらかいジェルタイプのグリスを使うとスムーズにジョイントできます。それでも握り締めるくらいだと少しゆるめにした方がよさそうです。

4:グラグラと…(その2) Flute
フルートの足部管ですが、組み立て時だけでなく取り外しの時にも、あまりラフに扱っていると、はめ合いが緩くなってくることあります。(逆の事もあります、次の項目)
よくある事ではありませんが、ひどいものになるとぐらぐら動きはじめ、放っておくと抜け落ちかねません。またポジションも決まり難く、吹き難くなるばかり。またガタツキが無くても本体の足部管側(内側に入るところです)が中側にすぼむように丸くなっている場合は要注意。頭部管は足部管ほどではありませんが、だからと言って同じように丸くなっているのは、もちろん良い事ではありません。

5:「入るけどキツイかも?」 Flute
まず、ジョイント部を丁寧に拭いてしてみましょう。頭部管(外側=入り込む側)はもちろん、意外と忘れがちな本体(主管)の内側もきれいにします。これでスムーズに入ればOK。それでも変わらない時、著しいキズ、管体の変形(前述の取り扱いによるもの等)がある場合は、重症にならないうちに見てもらう方がよさそうです。

6:音は出るけど…不安定?線が細い? Flute,Saxophone
頭部管の先端に付いているヘッドキャップの緩み、または、不用意に締め込んだ、掃除棒で(反射板を)突いてしまった、反射板を固定しているヘッドコルクがヤセていた、など頭部管の反射板位置ずれている場合は、鳴り難くなるだけでなく、場合によっては、ピッチ(音程)の狂い等、全体に影響してきます。付属の掃除棒でチェックしてみましょう。「割り(クリーニングガーゼを挟み込む部分)」がある反対側に溝が入っていますからそちらを中に入れ「歌口(楕円に開いている穴)」の中心あればOKです。
見ようによっては… ずれているかも?「う~ん… よくわからない!(よくわからない場合がほとんどです)」その場合は、調整を含め、見てもらってください。
最近は、あまり見かけなくなりましたが、それでもフルートの組み立て、頭部管とのジョイント時にグリスを塗る方がいらっしゃいますが、いろいろなところで言われている通り、塗らないのが原則です。
同じようにサックスのネックを本体に差しこむ際にもグリスを塗らないのが原則で、大抵の場合、〆ネジを締めても動く、嵌りにくい(外しにくい)、あるいは、それに伴うトラブルなどが多いようです。もちろんグリスを塗ってもきれいに拭き取って(ネック、本体共に)いればそれほど心配要りませんが、元々グリスを付けなければならない状態が普通でなく、その必要がない様に直してもらうことが一番。

7:音が出なくなった、凹んだ、など明らかに異常がわかるもの。音は出るけどいつもと違う、など…。Woods
木管楽器はいわゆる調整で、パッド(タンポ)の傷み、各キー調整、キーの動作不良に曲がり、トーンホールの欠損や汚れ、ジョイントコルクやネックコルクの劣化、バランスコルクの劣化や欠損、スプリングのヘタリや欠損、それらの組み合わせ…に気のせい?など普通に使っても避けられない部分がありますから、定期的に見てもらう事が一番。普段からチェックするポイント作っておくのも良い方法です。また「おかしい?」と思ったときは、「どんな時に…」とか「○○辺りが…」と大まかでも不調に感じる所を伝えておくと修理しやすくなります(技術者側に立つとそういうことが早く修理に繋がりますが、リクエストがそのまま原因なるとは限らず、複合的なこともあるためなかなかそうはいきません。ある意味言い換えると不具合を見つけることがほとんどとも言えます)
演奏会前になると楽器のほうが緊張するのか、それともウィルスが蔓延するのか…はたまた慣れない手入れのやり過ぎか?修理の数が異常に増えます。
最近になり、そういったことの一端が見えてきました、なんとなくおかしいのは感じていたけど、ギリギリまで我慢する・・・?本番前(直前)だから出す!っていうこともあるようですね。割と無茶な気がしますが・・・・。

つづく