楽器屋さんにおける修理のお話

電車に乗って紀行文みたいなものを書いていて、
そんな事ばかりしているのか?言われないために、たまには修理屋っぽくまじめなお話をしてみます。
・・・で、フルートのお話です。ですが、そもそもフルートなんて扱っているのか?そう言われますがーー「少しだけ急ぎます」のと「気長に待ちます」と言う修理をチョコチョコとやっています。
先ほどのように修理だの調整だのしていることと、販売(主に中古品ですが)もしているため、ケノン(#1)のような楽器をさわることになるのですが、こういった古い楽器の一番厄介というか笑ってしまうところは、一品ものが故のその「形」をどう整えるかとという点です。
過去、その一つの例ですが、お客さんの持ち込み品で「吹きたい」訳ではなく、使えるようにしておきたい(?)というおじいさんの持ち物という楽器。国産の老舗といわれるメーカが世に出た頃(多分)のもので管体は真鍮製、今ではお目にかかれないようなすごい引き上げ音孔、これまた、同じように、モイーズかなんかのモデルでしか見たこと無いような不思議なキイ。見た目の精巧さや高級感などどこにもなく、無骨な外観からは、「こんな時代があったのか?」と見入ってしまうような楽器です。
「わかりました」と引き受けたものの、実は何もわかっていません。ちらっと見ては「うーん・・・」手に持っては「うーん」唸っている場合じゃーありませんが、(本体の)出来の良し悪しとかは関係がなく、うーん・・・やっぱり唸ってしまう。ちょっとづつ分解しては、不都合な部分を調整、必要ならば似たような部品を探しますが、見た目には変わらなくとも合わせてみると微妙に違う。カット(飛ばしてそのまま)してもよいかとも思うが「やっぱり意味の無いものはないな」が、こういった困難にぶち当たった時の結論です。
試行錯誤を地で行き、どうにか合うものを探し「無ければ仕方がないから既製品を改造するか作る」を繰り返していった結果・・・・・2だったか3だったかヶ月後、多分・・・完成。
連絡すると「もう出来たんですか?まだ先かと思っていました・・・では、○○に伺います」とのご返事。あとはそのお客さんを来られるのを待って感想聞くことになります。

さて、試奏となりましたが、「音はでる」(直したはずだから当たり前かあ・・・)ですが、やっぱり洗練された「音」ではありません。ただ・・・上手く説明できませんが、ちょっといい雰囲気がする。現代の楽器の「音質(の方向)」とは、まったくと言ってよいほど違うので単純比較にはなりませんが、現代のグレード的に言うと「頭部管銀」・・・「管体銀」の間の上の方。扱い方にもよるのだろうけれど傍で聞いているとそんなような感じでちょっと楽しい。ただご本人はよくわからないとの事。まあ前述のような目的なので「音がでた」ということで持ち帰られました。
さて他にも気付きを言うと、音程がどんぴしゃ!なんていうことも無いがどうにもならないわけでもない、希望的観測だが「作っていく」と考えればなんとかなるかもしれないとも思う。他にはエアーをたくさん入れて吹き込んでしまうと倍音が薄くなったように聞こえてくるのは、吹き手の方かそれともまだ(楽器が)成熟していないためなのか・・・なんともいえませんが、遊ぶにはじゅうぶん楽しそう!な楽器でした。