ちょっとだけまじめなリードの話です③

アルトサックス吹きのTさん、半年に一度くらいで来店し、その都度リードを買ってもらっている。お好みは♯2‐1/2(か、それ相当)薄いめのリード。しかし、ある時から4番を買っていかれるようになった。でも、それが、なんと、あの青い箱。
きっかけは、うちにある長期在庫品を自慢話のごとく、熱~く語っていたら、ありがたいことに「一箱もらおうかな」と、買ってもらった事がはじまりだ。とは言え「前回の来店はいつだっけ?」というくらい前の話、このコロナ禍のことなんで、すっかり忘れていた。
そんな流れで買ってもらったものだから、久しぶりだしひょっとすると焚き木にでもしているのではないかと、聞いてみると・・・(やっぱり)削っているそうだ。まあ普通の答えだと思うが、それにしても(先ほどのように)彼の場合、コシの弱いものが好みのはず、加工するにしても相手は、あの「青箱の4番」、削るって言ったって限度があるだろうと思い、訪ねてみる。
ー削って使うんだよね?どう使ってんの?
「ええ、削ってます、でないと全然吹けないので。ペーパーとかトクサとかのレベルじゃなく、鉛筆削るみたいに小刀で。」
ーそりゃそーだろう、普段使っているのからいうと、ベニヤ板並みだよね?
「まあ、何枚かの削りカス見てたら、版画でも彫ってんの?って感じですね」
ー相当(強力なコシ)だと思うけど、オリジナルを吹いてみたとか?
「ええ、口を付けただけですが、(4番ですから)コシの強さは材木並み、そのままじゃとても使えませんから何とか使えるように鉛筆削ってます。一枚ほど、いい感じになったんで、ちょっと調子に乗りました」
ーでも、あれは10枚入り。全部使ったの?
「うーん・・・まあ使ったと言えばそうだし、ほとんど失敗してますからね。初めは手間がかかり過ぎて(挫折)、今度はやり過ぎて(ペラペラ)、なんとか『いい感じ』って喜んだのもつかの間、(よくある)なんかあっけなくヘタるし、なかなかすぐには上手くいきません」
ーそれでも、完成したわけだ。
「いいえ、まだです。”V16″だか”RICO”だかよくわかんないのができましたが、偶然ですね、試行錯誤しているうちにたまたま・・・って感じです。リード的には好みではありませんが、長持ちしてます。なんか素材(ケーン材)は最高ですね。最初『まだちょっと厚いかな』って思っていましたが、使っていくとなぜかすごく振動するようになりました。もう3か月くらい使っていますが、(音が)開く感じもなく、フラジオも問題ありません。(試しに)毎日のように使ってきて、なぜか『いい感じ』になってきたので、俄然やる気がでました。素材は最高ですが、まだコシの強さが(調節できずに)あるので、一方を4番に変えて使ってます。」
{見た目は全くわからない}
ーよんばん?何のこと?
「ああ、メイヤー、マウスピースですよ。今それ(リード)のコピーを作っています」
ーコピーって、どうやって?また削ってーかね?それとも機械・・リードメイキングマシーンでも買ったとか?
「そんなの買いません、いくらするんですか?(ー知らないけど100万くらいだったかも)そんなの買えないし、それだけあったらまとめ買いして、(悩まず)ずっと吹けますよ。でも道具類はいくつか買いました、よーく切れる刃物とか」
ーなんか、すごいけど、だんだん大袈裟になって・・・めちゃめちゃな感じするな
「慣れましたが、手間ですね、やっぱり」
ーそれだったら、いつものやつの微々調整とか三番程度からやった方が、すぐに結果出るし、楽じゃないの
「今までそれもやってました、ダメなものだけですが。それでもよかったんですが、なんていうのかな・・・何か違ったんですよねえ。この際だから調整っていうじゃなくて根本的に手を入れるとどーなるかって」
ーよくまあ、そんな考えに行き着いたね。
「まあ、押し売りされたんで」
ー・・・・まあ押し売りついでにジャズセレクトはどう?相当いいよ
「検討していきます」