楽器屋の修理のお話

今回もフルートです。ヤマハのスタンダードモデル。YFL211,311っていう学校とかの備品によくある楽器で、なんとなく覚えている・・使ったことがある方も多いはず。コストが合わなくなったのかーそれとも存在意義を説明するに困ったかYFL221が廃盤となり、リッププレート銀を謳っていた211は、「リッププレート 銀製」の記述がいつしか無くなったり・・・としていますが、普及品として(なんとか)維持していこうとするメーカー側の密かな努力が垣間見えます。

同じような仕様のモデルにYFL514,614(現在は517、617に型式変更)古くはYFL451,483などの型式がありますが、これらはスタンダードとは別機種のアップグレード版で主な違いはコンセプト。上級機種と言われるカスタムモデルのダウングレードで設計思想や作業工程数が違い、同じ材質配置でも、スタンダードとは違ったものになります。もちろん価格面もアップします。

さてさて、そのスタンダードシリーズ、基本型番が同じとは言うものの、それだけ長い間生産されていると、見た目にわからずとも設計が全く変わっていないということはありません。
いつだったか、キイの腐食が激しくてパーツ交換のリクエストがあった時の事。ちょっと古めの修理品(YFL-311です)見た目には(他と)違うようには見えませんが、問い合わせてみると「該当年代のパーツは(ぎりぎり)ない」らしい。しからば同等品は無いか?と尋ねると「汎用部品ではないのでわからない」との答えだ。型式いっしょみたいなものだし、この辺って同じようなものじゃないの?「パーツナンバー違うので・・・」そんなに設計変更するようなことするかなあ?「それはなんとも・・・」まあいいや、多分大丈夫でしょ、と注文し到着するのを待ちました。結果からいうとーまあ上手くいかないものです。(あったくーなんだよー違うじゃないか・・・後にピッコロでもありましたが)お客さんに事情を説明し判断を仰いだところ「代えてください」とのこと。ひょえー合わないって言ったのに・・・。
見た目は同じですが、ポストピッチなど微妙(精度から言うと全然ダメですが・・・)に合わず、パーツASSYを分解、何度も調節しながら組み立てて、ようやく完成(文章だとすぐ終わりますが)。一部のキイが異常にきれいでちょっとアンバランスですが、喜んで(笑って)は頂けました。「これって修理と言うのかなあ?」と深ーく考えると敬遠したくなる修理です。
ほとんどのものは、ヘッドコルクを替えたり、キイバランスを見たり、一部分解にして調整紙を入れたり出したりするの(調整)が主な作業です。調整もし易く作られているのも(直す側にとって)良いところですが、かと言って調整自体が簡単なわけではありません。元々普及品としてステップアップされる事が前提なので、さきほどの例は稀(思い入れが深すぎる)で、そこまでされる方いらっしゃいませんし、YFL-21Xだとステップアップか興味が他に行ってしまうため、まったくありません。

リッププレートが銀(では無いらしく、おそらく近年は成分が多い材料を使用)の価格重視21X、頭部管が銀製の初級者向き31X、管体銀製のお手軽上級モデル41X・・・と型式よりは、材料構成でいったほうがわかりやすいラインナップ。鳴らし易い頭部にやEメカニズムが標準で付くことや少し手を加えてやることで「お!」と思わせる潜在的ほどの可能性もあってさっきのようなリクエストが無ければ楽しく触れる楽器(シリーズ)のひとつと思っています。