楽器屋さんの修理のお話

1、時計その1
「…ところで、これも直してもらえますか?」
「何でしょ? ん? え~正気ですか!? そんなの直せませんよ!」
何を頼まれたかと言うと楽器じゃなくて時計。楽器の調整の間に、腕時計の電池を替えてもらいに行こうか…と思っていたそうで、時計も直せるのじゃないかと思われたらしい。どこからそんな発想が…
「でも… それってうちの仕事かなあ?」
まあ、時計です
「あー、そんなに気にされなくても、安いものだし、古いし…クレームとか言いませんから、気楽にしてもらえば…」
電池の交換で、時計も高いものじゃないと言われても、気楽になんかできません。本人曰く、何度か電池交換に出したらしいのだが、中身(交換するところかも?)を見てみたかったらしい。どうしても、と言われて、 つい調子に乗って裏蓋を開けてみた。小さな電池が見える。

「これと同じやつを買ってきてください」

電池を替えて裏蓋を閉める。
「ああ!直りましたね!」
「ええ、動いていますね(もう、持って来ないようにして)」

2、時計その2
Aさん:「こんにちわ、(一通り話が終わったところで…)ところで、これってできます?」
何かというとまたもや時計、でもこんどはバンドを短くするというもの。シャフトにねじでつながっていてそれを外すと短くなる。それにしてもなんと小さなネジ!
Aさん:「くるくる回っちゃって…それに不安定なんでうまくできなくて」
2コマほど、ここのところを取ればいいということらしい(ドライバーを差込み、うーん!!)ここは、曲がっているし、切れそうでちょっと怖い‥。
Aさん:「じゃあ、1コマで」
虫めがねでネジの位置を確認、ここは、大丈夫みたい(・・・しばらくして)ほら、取れました。外周をつないで、大きさを確認(サンプルを見せながら)これより一回り小さいみたい。「じゃあ、やっぱりさっきのところを外しましょうか」と指先に力が入る!・・・妙な脱力感・・・あらら、ネジが切れてしまいました。
Aさん:「でも余分がありますから、これでつなげばできましたね!」
うーん、細い!それにしても、なぜウチに持ってくるの??
「やっぱり、持って来ないでね、お願いします」

3、テナーサックスのケース
K君 「すいませ~ん、これ見て貰いたいのですが…」と同時に目に入ったのが、グチャリとなったテナーサックスのケース。
それ、どうしたの?
K君 「いやー、車をバックさせていたら、楽器置いているのに気が付かなくて…」
ふーむ‥それ轢いちゃったわけ?ところでこのケース開くの?
K君 「ああ、大丈夫です。開きますよ。(何が大丈夫なんだか…)」

どれどれ、それでは拝見。「う、…」ケースでおよそ想像が付いたものの相当ひどい。

K君 「ものすごい音がした時には、もうダメかと…でもその割には、意外と大した事はなかったって思いました」
まあ、そうかもしれないけど、やっぱりひどいよ。

数年後…
当時K君と同じバンドに所属しておりました、H君が、珍しく来店。今では転職し家も引越し、音楽活動も全くご無沙汰とのこと。でも彼(K君)はまだ元気にそのバンドで活躍している、と言っていました。
その後、偶然とはこわいもので、最近そのバンドの歌姫が来店、彼はどうしていると尋ねると「ああ、元気ですよ、でも初めからのメンバーは彼ともう一人だけですけど…」とのこと、聞くところによると、その後はペチャンコにはしていないらしいが…。